習慣再開のシンプル術 いつもの場所やモノを「始める合図」に
習慣が途切れてしまった時、どうしていますか?
読書を続ける、毎日ストレッチをする、少しずつ勉強を進める。
「今日から始めよう」「今度こそ続けよう」と決意して始めた習慣も、忙しい日々の中でうっかり忘れてしまったり、予期せぬ出来事で中断してしまったりすることは、誰にでも起こり得ることです。
そして、一度習慣が途切れてしまうと、「また最初からやり直さないと…」「続けるのはやっぱり難しい」と感じて、再開への一歩が重くなってしまうこともあるかもしれません。完璧にこなせない自分を責めてしまう、というお話を耳にすることもあります。
でも、大丈夫です。習慣が途切れることは、決して特別なことではありません。むしろ、私たちの忙しい日常においては「当たり前」のことと言えるでしょう。大切なのは、途切れてしまった事実ではなく、そこからどうすれば自然に、気楽に再開できるかを知ることです。
今回は、特別な準備や複雑なステップは一切不要。あなたの「いつもの場所」や「いつものモノ」を上手に活用して、途切れた習慣を再開するためのシンプルで効果的な方法をご紹介します。
なぜ「場所」や「モノ」が再開のきっかけになるのか
私たちの習慣は、実は特定の行動そのものだけでなく、その行動を行う「場所」や「時間帯」、「周りにあるモノ」と強く結びついています。
例えば、
- ソファに座るとリラックスして読書がしたくなる
- キッチンに行くとお茶を淹れたくなる
- 特定の場所に置いてあるトレーニングウェアを見ると運動を思い出す
のように、無意識のうちに周囲の環境が行動の「合図」となっているのです。
この性質を利用しない手はありません。意識的に、習慣を再開するための「合図」を、あなたの日常にすでに存在している「場所」や「モノ」に設定してみましょう。
これにより、「習慣をやるぞ!」と気合を入れるのではなく、「あ、この場所(モノ)を見たら(触ったら)これをするんだったな」と、自然に習慣を思い出し、行動に移しやすくなります。思考よりも、物理的なきっかけの方が、忙しい時でも行動へのハードルが下がりやすいのです。
習慣再開を助ける「場所・モノ」トリガーのアイデア
具体的な習慣と結びつけて、「場所」や「モノ」を再開のトリガーにするアイデアをいくつかご紹介します。あなたの習慣やライフスタイルに合わせて、自由にアレンジしてみてください。
1. 読書習慣の再開
- アイデア: いつも読書をする場所(ソファ、ベッドサイド、食卓など)の、一番目につく場所に読みたい本を開いたまま置いておく。
- ポイント: 「読もう」と思った時にすぐ手に取れる場所に置くことが重要です。準備する手間をなくすことで、ハードルがぐっと下がります。
- 例: 夕食後、片付けが終わってリビングに戻ったら、ソファのサイドテーブルにある開いた本が目に入る。「少しだけ読もうかな」と自然に思える。
2. ストレッチ・軽運動習慣の再開
- アイデア: 習慣にしたい運動をする場所(リビング、寝室など)に、ヨガマットや軽いダンベル、トレーニングウェアなどを見えるように置いておく。または、特定の場所(例えばテレビの前、窓際など)を「ストレッチコーナー」と決める。
- ポイント: 視覚的な刺激が強力なトリガーになります。「片付けるのが面倒」と感じるかもしれませんが、再開を促す「合図」としての役割を重視しましょう。
- 例: お風呂上がり、寝室に戻るとベッドサイドにヨガマットがある。「ついでに少しだけストレッチしてから寝よう」と思える。
3. 勉強・学習習慣の再開
- アイデア: 勉強に使うテキストやノート、筆記用具を、いつも作業する場所(ダイニングテーブル、キッチンカウンター、書斎のデスクなど)の特定のコーナーにまとめて置いておく。
- ポイント: 机の引き出しにしまわず、いつでも手を伸ばせる場所に「勉強セット」としてスタンバイさせておくのがコツです。
- 例: 子どもが寝た後、キッチンで温かい飲み物を淹れてダイニングテーブルに戻る。テーブルの端にある勉強道具が目に入り、「少しだけ進めよう」と座る気になる。
4. 片付け・整理習慣の再開
- アイデア: 片付けを始めたい場所(リビングの一角、玄関、クローゼットなど)に、空のカゴやボックス、ゴミ袋などを置いておく。または、片付け専用のプレイリストを用意しておく。
- ポイント: 片付けたいモノ自体をトリガーにするのではなく、片付けを始めるための「準備ツール」をトリガーにします。音楽は聴覚的なトリガーとして有効です。
- 例: 玄関の靴箱の上に空き箱を置いておく。帰宅してそれが目に入ると、「この箱に靴以外のものを少し入れよう」と、片付けが始まる。
これらのアイデアに共通するのは、「特別な時間を作る」「特別な道具を買う」のではなく、「いつもの場所」に「いつもの習慣に関連するモノ」を置く、あるいは特定の「場所」と習慣を結びつけるという点です。
気楽に再開するためのヒント
「場所」や「モノ」をトリガーにする方法を試す上で、さらに習慣再開を楽にするためのヒントをいくつかご紹介します。
- 完璧を目指さない:「1分だけ」でもOK トリガーを見たら、必ずしも長時間やる必要はありません。まずは「1分だけ本を開く」「ストレッチの最初のポーズだけする」「テキストの最初の1行だけ読む」など、ごく小さな一歩から始めましょう。重要なのは、「再開した」という事実と、その「場所・モノ」を再結びつけることです。
- 一つだけ試す: 一度にたくさんの習慣にこの方法を導入しようとせず、まずは一つ、一番再開したい習慣を選んで試してみてください。
- 途切れても自分を責めない: せっかくトリガーを設定しても、それを見ても行動できない日があるかもしれません。それは全く問題ありません。自分を責めずに、「明日は場所に戻ってみよう」「次はきっとできる」と、気楽に構えましょう。この方法の目的は「完璧に続けること」ではなく、「途切れても気軽に再開できること」です。
- ルーティンと組み合わせる: すでに定着している日常のルーティン(例:朝食を食べる、歯を磨く、コーヒーを淹れる)の直後に、設定した「場所・モノ」トリガーを見るように意識すると、習慣化しやすくなります。
まとめ
習慣が途切れることは、決してあなたの意志が弱いからでも、能力がないからでもありません。それは、日々の暮らしの中に予期せぬ出来事が起こる自然な結果です。
大切なのは、その都度自分を責めるのではなく、「どうすればまた気楽に始められるかな?」と、再開のための工夫を楽しむ視点を持つことです。
今回ご紹介した「いつもの場所やモノを始める合図にする」方法は、忙しいあなたでも特別な時間を取らずに実践できる、シンプルで強力なリカバリー術です。
あなたの日常に馴染む「場所」や「モノ」を一つ見つけて、まずは「ここに来たら、これをする」と決めてみてください。きっと、習慣を再開するための一歩が、以前よりずっと軽くなるはずです。
完璧でなくても大丈夫。小さな「きっかけ」を大切に、あなたのペースで習慣と向き合っていきましょう。